企業法務部
弁護士森田 博貴
2017.07.25
企業法務
Q
A
不動産取引に携わると、しばしばこの瑕疵担保免責条項に出会います。
まず、売買契約では、売買の目的物に隠れた「瑕疵」(個々の売買契約の内容に照らせば目的物が有すべき品質・性能を欠いているといえること)がある場合、買主が、売主に対し、それにより生じた損害の賠償請求や、当該売買契約の解除を行うことができます。建物の売買の場合、建物の基礎や構造躯体内部の異常など表に出ない瑕疵が存在することが多く、売主からすれば、売買成立後もそうした瑕疵担保のリスクに曝され続けます。
瑕疵担保免責条項(買主は、売買成立後、売主に対し、瑕疵担保責任を追及しないという条項)は、そうしたリスクを嫌う売主が、売買契約の内容に盛り込む特約です。
今回のテーマは、この免責条項さえ入れれば、売主は常に安全かという問題ですが、結論から言うと、答えはノーです。免責条項を入れることで、売主に不利になることはないのですが、これを入れたとしても常に免責が約束されるわけではありません。たとえば次のケースでは、法令上、当該免責条項は無効とされます。
① 売主が瑕疵の存在を知っておきながら買主に告げていなかった場合
② 売主が事業主、買主が消費者の場合(責任の全部免除に限り、無効とされる)
③ 宅地建物取引業者が売主となる場合
これ以外でも、瑕疵が重大なケース等では、信義則という一般則により裁判所の判断で当該免責条項が無効とされることがあります。ですので、売主としては、免責条項を入れるに越したことはありませんが、入れたからといって常に安全とまではいえないのです。